【音楽理論】ナチュラルマイナーモーダルインターチェンジー『ウニが好き/山内良太』(後編)

2018年6月6日

ウニが好き、アナライズの後編

ギタリスト、ハヤエモニストの北島健吾です。
ハヤえもん開発王りょーたさん(@ryota_yama)の新曲『ウニが好き』でコード進行、アコギを担当しました。
前回からかなり間があいてしまいましたが、覚えていますでしょうか??


まずは曲の動画からです。

こちらが曲です。そして、過去記事も。

今回は残された、イントロとDメロ、Eメロ、Fメロまでかな。



イントロとエンディングのコード進行はベースの動きが肝

こちらが譜面です。

もう、トニックとかドミナントとか書かないでディグリーネームだけで大丈夫そうですかね。オレンジ色で囲ったベースの部分に注目してみてください。オンコードを使うことによって、ベース音が半音で繋がり引っ張られていくクリシェという奏法にしています。(オンコードって分数コードのことです)

ちなみに、上の図で初めて出てきた矢印はドミナントモーションを指しています。何がどのコードに紐づいているのかの確認ですね。今回は、Ⅵm7に解決する裏コードです。

DメロはⅣの雰囲気で場面転換

こちらが譜面です。

なぜ、オンコードによって浮遊感が出るかというと、そもそもオンコードというのは元のコードの3度、5度、7度などをベースにした転回形、と捉えることもできるしそのルートを1度として見るとテンションのようなものです。

上の図のように、GというⅣ度の世界感を保ちつつも上に乗っているコードを動かすと、リディアンモードを動かしているような雰囲気になります。Aが乗っかっていると思えば、単なるA7の転回形なのですが、あくまでもGがルートだとおもうとテンションしか残りませんからね。

次はEメロ

これが譜面です。

半音進行で、メジャーコードの転回形(3度をベース)を挟むと隣のコードに接続しやすいです。ちなみに3度が一番下に来る転回形を第一転回形(ファーストインバージョン)と言います。ドミソをミソドにしたり、レファラをファラレにしたりですね。

E/G♯の箇所は、分子のE(セカンダリードミナント)がAに向かおうとしていて、なおかつG♯→Aという半音の流れで繋いでいます。

そして、F♯/A♯のところは、本来Bmに向かうセカンダリードミナントですが平行調のDに解決していきます。なんで、ここでハーモニックマイナーを使ったかというと感情の高まりを演出するため。いわゆる『クサさ』をブーストするためです。りょーたさんも耳が反応して切なく叫んでいます。

いま、「セカンダリードミナントはトニックに解決するものじゃないの?」と思った方もいるかもしれませんが、各コードの5度上のコードをセカンダリードミナントにすることでより強い進行感を出せます。

解決したいコードから見た5度があれば仮想の2度もあるわけです。そうすると、仮想のツーファイブを作ることもできます。また、ドミナントコードには裏コードを作ることができます。そして、裏コードのツーファイブも同様に作ることができます。(落ち着けって思うよね)

サークルオブフィフス

上の図のようなものがあります。キーC用に作られた五線譜上で、キーが変わるとどのように調合がつくのかをまとめてます。

例えばキー1つあげるっていうととんでもない隔たりがあるわけです。CからC♯(またはD♭)に行くには、この場合7つの音に全部♯がつくわけですからね。逆に、♭が5個の方が近いかもしれないですね。

この図を出した理由は「解決先から見た5度とか2度とか何を言ってるの?」となった時に5度や4度の関係をわかりやすくするためです。

Cの5度上はG、Gの5度上はD。みたいな関係をさくっと見えるようになっていると、セカンダリードミナントがとても簡単になってきます。

今回は、キーDのⅤにあたるAadd9(Aミクソリディアン)にたいしてその5度上にセカンダリードミナントのEをつくることでドミナントモーションをしています。

ドミナントモーションは4度進行です。
Cメジャーのツーファイブワン[Dm7→G7→Cmaj7]や、
Cマイナーのマイナーツーファイブワン[Dm7(♭5)→G7→Cm7]のような動きですね。
この法則を使って自分がどこのコードに向かいたいのかを設定して、ドミナントモーションを挟むと接続しやすくなります。もちろんツーそのものをセカンダリードミナントにすることもできるので、D7→G7→Cmaj7のような進行の場合はドッペルドミナントとかダブルドミナント、などと言われます。ミスチルの名もなき詩とか、珠玉のポップスでもでていて常套句です。

ただ、理論上可能なだけで歌いやすいかどうかというと別物ですので、結局は耳で判断することになります。




Fメロ サブドミナントマイナーを使う

ここではサブドミナントマイナーを使っています。キーはDメジャーだったはずですが、一瞬キーがDマイナーの和音の中から借りてきて使っているわけです。
このように同主調のメジャーとナチュラルマイナーを行ったり来たりするのをナチュラルマイナーモーダルチェンジといいます。

ここで重要なのは、キーそのものがマイナーというわけではなくて、
キーがメジャーの曲の中で一時的に混ぜて使っているということです。

もともとキーがDのときのサブドミナントコードであるGを、
サブドミナントマイナーのGmにしている理由となる音。
Gからみた3度が重要です。B♭ですね。
コレを含んだコードが全てサブドミナントマイナーの機能を持っています。サブドミナントをサブドミナントマイナーにした音があるからサブドミナントマイナー。

この曲でいうと、Em7(♭5)、Gm7、B♭maj7、C7などです。
今出てきたものは、Gm7とC7のツーファイブ的な流れ。
「あれ?C7って、Fに向かうドミナントコードじゃないの?」
となる方もいるかもしれませんが、
曲の流れで一時的にナチュラルモーダルインターチェンジをする場合、
♭Ⅶ7には強いドミナントの機能はありません。
B♭を含んだサブドミナントマイナーとして曲中に盛り込むことができます。

そのほかはトニックマイナーとドミナントマイナー。

ですがドミナントマイナーは通常のドミナントコードがあるためモーダルインターチェンジで思いっきり多用されることはありません。ほとんど出てこない、出てきたら雰囲気変えたいだけと思ってもいいでしょう。

お疲れ様でした

ここまで、突き進んできてコードの付け方で新しい可能性が出てきましたね。今回はキーDで行いましたがもちろんキーCでもキーGでもディグリーだけ合わせれば応用できます。

コレは、あくまで縛られてこのコードを使ったのではなくて「表現の裏付けとしてこういう風に説明ができるから使った。」と言える方が、あとあとでも引き出しとして定着します。

覚えたことは一度忘れて、耳に残ったものだけを自分のお気に入りにしておくのもいいと思います。

 

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